日々ゆる考

書きたいことを書きたいときに書く雑記帳。

おもいでのケータイ

特別お題「おもいでのケータイ」

 

私のおもいでのケータイは青春時代でもある

中学二年生の頃に買ってもらった携帯だ。

2005年auから発売されたW32Hである。

 

今思うと中学生に携帯は不要だと思うが、

クラスで3人ほどしか持っていなかった携帯は

とても特別なものに思えて仕方なかった。

どうしても欲しくて、親にねだった。

 

もちろん親は

「そんなの中学生に必要ない」

と言っていて取り合わなかった。

 

そこで

「学年のテストで10位以内に入ったら買って」

と条件をつけた。

普段の成績から10位は無理だと思ったのだろう。

10位以内だったら買ってやると言ってくれた。

 

そこでその日から1週間後のテストで

学年3位をとった。我ながらすごい物欲である。

親は約束を破らずに、渋々だが買ってくれた。

 

ただ、買ってもらった携帯は連絡先は家族とクラスの3人

他のクラスの4人ほどしか入ってなかった。

 

クラスの人はほぼ毎日会って話すし他のクラスの人も

メールしたいことがあるわけでない。

 

そういうわけだから早々に携帯はネットに繋いでゲームをするゲーム機になった。

 

転機が訪れたのは、いつものように休み時間に友達と交代で携帯で

ゲームをしていた時である。

 

クラスの女子が携帯を買ったからアドレスを交換しようと言ってきた。

その子は普段そんなに喋るわけではないが可愛かったので、すぐに交換した。

 

そこからである。携帯の本来の機能をよく使うようになったのは。

 

 

今思えば向こうもせっかく買った携帯だから誰かと連絡を取ってみたいと

思っただけだろう。特別な意味なんかなかったと思う。

ただ、その子と毎日メールをするようになった。

 

そして、すぐ好きになった。

中学生の私は単純だったのだ。仕方ない。

 

今の連絡手段はほぼlineばかりだからlineから携帯を持つようになった人は

わからないかもしれないが、

メールにはlineとは違うワクワク感があった。

 

一回のやりとりの内容は毎回長文だったし、

その子専用のメールの着信音なんか設定していた。

送るときはわざわざ電波をよくするために空に掲げたりしていた。

 

何よりやりとりをするたびに件名に溜まるRe:という文字。

このRe:が何個も続いているのが

その子と私が何度もやりとりをしている証みたいなものでとても

嬉しくなったりした。

今思うと単純な上に気持ち悪いが中学生だったので許してほしい。

 

そんなこんなで毎日メールをする日々。

冗談や愚痴なんかも言い合ったりして

自然と学校でも会話をするようになり普段から休み時間喋るようになった。

 

思春期真っ盛りの男子であった私は

「もっと仲良くなりたい。付き合いたい」

と思った。

 

なので、どうやってか告白しようとしたのである。

しかし、いざ告白しようとすると尻込みしてしまうものである。

なかなかできなかった。

 

そんな時である。

確か、冬休みに入って3日ほどだったと思う。

学校で会わなくなっても毎日メールしていたのだが、

 

「転校する」

 

とだけ打たれたメールが届いた。

 

意味がわからなかった。

冗談だと思って返信しようとしたが、立て続けに

 

「携帯も解約するから連絡取れなくなる。言うの遅くなってごめん」

 

ときた。

そこで冗談じゃないことに気づき、いつ転校するのとか、なんで携帯も解約するのとか

たくさんの言葉を打ったメールを送った。

 

「冬休み明けには新しい学校に行く。携帯は親から解約しろと言われた」

 

とだけ返信が来た。

思わず「は?」という声が出た。

 

冬休み明けにはいない。

つまりもう会うことはないわけである。

家の場所は知らなかったし、彼氏でもなかったから会いたいというのも憚られた。

その時点で私の一つの青春が終わった。

 

そこからは早いものである。

当時の自分はもう会えないんだったら告白とか意味ないなとか考えていた。

ただ、寂しかったのも事実だから

「寂しくなるけど、向こうでも頑張って」

みたいなメールをした。

 

そういうやりとりをして

そして呆気なく、

 

「携帯解約してくる。楽しかった。ありがとう」

 

その時間はやってきた。

 

冬休みが終わって新学期が始まって先生から転校したという話を聞かされて。

実感して家に帰って少し泣いた。

 

そこから小説のような展開があればいいが、一度もその子と再開もしなかった。

自分に、もう少し行動力があれば最後に会いに行けたのではないかと後悔もした。

 

その子と付き合っていたわけでもないし、どこかに遊びに行ったわけでもないが

携帯にはたくさんのやりとりが残っていて当時はよく読み直した。

 

私の「おもいでのケータイ」である。

 

 

 

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